建築への手がかり展vol. 1
- 会期 │ 2019年8月17日(土)~9月16日(日)
- 時間 │ 11:00 - 18:00
10周年記念企画展
建築への手がかり
和紙壁や左官壁の素材の力
照明による空間の変化
家具からはじまる空間
間口の取り方、風の流れ
小さなドアノブの力
日時 8月17日(土)~9月16日(月) 11:00-18:00
8月の休店日:18(日)、22(木)、25(日)、26(月)、31(土)
場所 HIRAMATSUGUMI
昨年新たな居を構えました。棚田の風景が広がる谷と谷の間の人の営みが少し感じられる場所。靄がかった景色に朝日がやさしく差し込み、時に煩わしいほどの鳥の声で目を覚まします。太陽の光は手の揺らぎがのこる土壁をなぞり、床に落ちて時間を知らせてくれます。時に吹き抜ける風がカーテンを揺らし、野焼きの煙たさや、朝露の湿り気を含んだ匂いに包まれます。雨の日は雨音を感じながら緑をより濃く濃くした景色に目を奪われます。毎日がちいさな世界の連続で途切れることなく出来上がっていることに気が付くのです。
そこで建築は主役ではありませんでした。背景であり、風景になるのです。もともとそこにあったように、これからもずっとそこにあり続けるように佇んでくれていればいいのです。
何気ない日常の中に建築は息づいています。照明や家具、はたまた、和紙や土壁などの中にもです。テーブルや椅子からはじまる空間のあり方。照明が照らし出す素材の質感。和紙や土壁がもつ素材自体の力。光や風をコントロールする開口の存在。階段がうみだす多様な関係性。そういった一つ一つの断片が建築となるのです。
今展ではそれらの断片をヒラマツグミが考える建築として提案したいと思います。より身近な存在であるそのものたちは、建築へのてがかりになるはずです。
イベント
■施工見学会(和紙/ハタノワタル)
8月17日(土)
ハタノワタルさんによる和紙の施工の様子をご覧いただきます。和紙が貼られることにより空間が出来上がっていくその刻々をぜひ体感してください。
■施工見学会(左官工事/風の絵 前田達也)
8月19日(月)20日(火)
風の絵前田達也さんによる左官仕上げの施工の様子をご覧いただきます。左官の淀みなく流れるような仕事はずっとみていられます。
■中国茶会(TE-tea and eating 川西まり)
9月1日(日)11:00-、12:30-、14:00-、15:30-(各30分程度)
料金 ¥1,000 お茶1種、お干菓子
定員 6名様
今展のために作られた空間を味わうための茶席を設けます。お席が少ないためご予約をおすすめします。
イベントレポート
建築とは建物だけでは成立しません。そこにある要素全てが建築を構成していきます。バウハウス創始者のグロピウスは「全ての造形活動の最終目標は建築である」と言ったそうですが、一つの建築を作り出すためにひとつひとつの造形物もその建築の一部なのです。
「建築への手がかり」展ではいままで設計の仕事、ギャラリーで展示販売させてもらってる方々の作品も展示販売しました。常設のように販売中心の展示ではなく、実際に空間をイメージしやすいよう建築との関係性を考えながら展示方法を検討しました。
展示会は未完成の空間から、左官や和紙貼りなどの施工風景をみてもらいつつ、徐々に空間を作り込んでいき、ようやく中盤あたりに全て完成した状態を見ていただけるよう、進めていきました。
初日のハタノワタルさんの施工見学会は、多くの方にお越しいただき大盛況の1日となりました。普段ハタノさんの仕上げた空間を目にする機会はあれど、和紙が貼られる様子を見られる場面はそうそうないので、とても貴重な機会となりました。すぐ傍の作業テーブルで、レクチャーを受けながらテーブルの天板にするための板に和紙を貼る方たちや、家に持ち帰って障子や建具にチャレンジしてみると大量に和紙を買って帰られた方、流れるような手さばきを真剣に見つめておられる方、楽しげに談笑されている方など、みなさまそれぞれに楽しんでおられる様子が見られました。
この日は、テーブル天板、壁2面、障子を次々に仕上げ、またその全てが違った表情、表現を見せてくれていました。
刻々と変わっていく風景を、仕上がっていく空間を1日かけて楽しんでいただけたのではないでしょうか。
翌日は、左官 風の絵 前田達也さんの土壁の施工見学会を開催し、奥の小部屋の壁、天井を土壁で仕上げていきました。美しいその仕事ぶりや、土壁が乾燥して風合いが変化していく様子など、空間が出来上がっていく過程をすぐそばで眺めることができ、空間への愛着がよりいっそう深まりました。
お越しいただきました方々、ともに作り上げてくださった作家さんや、職人さんに改めて感謝しています。ありがとうございました。
Concept
立方体の建築
我々が建築を設計する際に、一つの大きな性格を建築に与える。それは、コンセプトや構成などとも言われる。詳細な部分からの設計ということもあり得るが、多くの場合がその建築の大きな性格を探し求めることに最初の多くの時間を割くことになる。そこが決まれば、その流れに任せながら建築の詳細を検討していくことになる。そのことを表すためにここでは最も単純でわかりやすい形として、立方体の建築を作ってみる。
普段の設計には、敷地、予算、用途、個人の趣味など様々な条件が付きまとう。今展では科学実験のように様々な重要な条件をいったんないことにし、立方体というフレームがつくる建築について考えてみることにする。
一辺350mmの立方体を基準に2倍、3倍と大きさのみを変えることで、そのフレームに人や空間との関係が生じてくる。フレームに面をつくることにより様々な用途が発生し、我々はそれをなにかに利用できるようになる。椅子や机、展示台、はたまた空間のフレームになり全体を構成し建築としてあらわれてくる。さらに、面の素材がその建築に意味を与え、複雑な関係性がうまれ調和を保ちながら全体を整えていく。
我々はそうやって、もっと複雑で入り組んだ条件を整えながら建築を考え、建築を作っている。魅力的な建築はそれら複雑極まりない様々な条件を超えた存在としてそこに現れ、我々に訴えかけてくる存在になる。