植生の調査_File08_沼島
2026.5.25
Researchの概要
沼島は、淡路島の南約4.6km、紀伊水道北西部に浮かぶ兵庫県最南端の島である。面積は2.71㎢、周囲約9.53km、最高地点は標高117.2mを測る。
島は中央構造線の南側に位置し、全域が三波川変成帯の結晶片岩によって形成されている。
周囲には奇岩や断崖が連なり、豊かな海とともに漁業を中心とした暮らしが今なお息づく。集落内には入り組んだ路地や石垣の景観が残り、歴史ある島の風土を感じさせる。
また、島のほぼ全域が瀬戸内海国立公園の特別地域に指定されている。
Nushima is the southernmost inhabited island of Hyogo Prefecture, located 4.6 km south of Awaji Island in the northwestern part of the Kii Channel. The island has an area of 2.71 km², a coastline of about 9.53 km, and a highest elevation of 117.2 meters.
Situated south of the Median Tectonic Line, the entire island is composed of crystalline schist belonging to the Sanbagawa metamorphic belt.
Strangely shaped rocks formations and sea cliffs surround the island, while a fishing-based way of life continues to shape the local community. Within the settlement, narrow winding alleys and stone walls remain, preserving the island’s historic landscape and character.
Almost the entire island is designated as a special area of the Setonaikai National Park.
調査日2026年5月18日

※地図は国土地理院地図より加工して掲載。

キノクニスゲ
Carex matsumurae
カヤツリグサ科 常緑 多年生 草本
分布 本州 富山湾,三河湾以西、四国、九州、トカラ列島、伊豆諸島
高さ 30~50cm
絶滅危惧Ⅰ類 Aランク 兵庫県版レッドデータブック2020(植物・植物群落)
分布は極めて局在しており、離島の海岸付近で見られることが多い。キノクニスゲという和名は、紀伊半島で最初に発見されたことによる。束生し,大株になる。葉は、厚みがある革質。花は、春で直立した3~4個の雌花穂とやせた頂生の雄花穂を出す。

樹皮や枝葉には粘液が多く、乾燥して粉にするとタブ粉として線香の材料に使用される。また樹皮にはタンニンが含まれていて染料にもなる。葉は、葉は枝先に放射状につき、表面は濃緑色で厚く光沢がある。樹皮は暗褐色で、表面には小さなイボ状の皮目がある。

沼島八幡宮
永享8年(1436)梶原俊景の創建と伝えられる。
海上安全、四季豊漁の神様。
御影石の石段は、神門から上が三三段の女坂、下が四二段の男坂と呼ばれる。
看板には、神社の森は、ホルトの木が生い茂り県の環境安全地域に指定されているとあるが、現在は台風などの影響で多く倒木したしまったそう。南限、北限の植物が混生し、牧野富太郎博士が大きな関心を寄せた森でもあった。

クロガネモチ
lex rotunda
モチノキ科 常緑中高木
分布 本州(茨城県、福井県以西)から四国、九州、琉球列島
高さ 10m
花期は5~6月で、雌雄異株。本年枝の葉腋に散形花序をだし、白または淡紫色の花を2〜7個つける。
写真は雄花で、4〜6個の完全な雄しべと退化した小さな雌しべがある。雌株にのみつく果実は、核果で11~2月に赤色に熟す。

センダン
Melia azedarach
センダン科 落葉高木 ヒマラヤ山麓が原産
分布 本州の伊豆半島以西、伊豆半島、四国、九州、沖縄
高さ 5~20m
葉は2回奇数羽状複葉で互生、花期は5~6月で本年枝の葉腋に複集散花序を出し淡紫色の花を多数つける。金木犀のような甘い香りがあたりに漂う。
成長が早く、15~20年で木材として製材できるほど成長する。
樹皮や果実は、駆虫剤や鎮静剤として使用される。
種は削ってソロバンの珠にされていた。

ソメイヨシノ
Cerasus × yedoensis ‘Somei-yoshino
サクラ科 落葉広葉樹 高木
分布 日本各地
高さ 10m
ソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラの雑種が交雑してできた単一の樹を始源とする栽培品種である。(DNA解析によるとソメイヨシノの交雑割合が、エドヒガン47%、オオシマザクラ37%、ヤマザクラ11%、その他5%)各地にあるソメイヨシノは全て接ぎ木や挿し木で増やした同一クローンである。
江戸時代末期に江戸染井村の植木職人集団によって育成され、桜の名所の吉野(奈良県吉野山)にちなみ吉野桜として売り出した。その後、山桜などと混同しないよう染井をつけてソメイヨシノと呼ぶようになった。花期は3~4月、果期は5~6月、単一ではほとんど結実しないが、他個体の花粉を受粉すると、小さな黒紫色の実をつける。

ウラギク
Aster tripolium
キク科 一年草 在来種
分布 本州(関東地方以西)、四国、九州
高さ 20~50cm
絶滅危惧Ⅰ類 Aランク 兵庫県版レッドデータブック2020(植物・植物群落)
汽水の水辺に生える。淡路島では、成ヶ島と沼島で観察できる。
全体に無毛で葉は長さ5~10(15)㎝の披針形、葉先は尖り、基部は茎をやや抱く。花期は8~11月で、淡紫色の花が咲く。キク科の花は、見かけ上は一つの花のように見えるが、実際には花序であり、複数の花の集まりである。(頭状花序)

ハマウド
Angelica japonica A. Gray
セリ科 多年草 在来種
分布 本州(関東地方以西)、四国、九州
高さ 1~1.5m
海岸に生える大きな植物で、岩崖にも生える。
上立神岩へ向かう舗装道の脇、数ヶ所で見られた。
花期は4~6月で、複散形花序と呼ばれる姿の白い花を咲かせる。

キケマン
Corydalis heterocarpa var. japonica
ケシ科 2年草
分布 本州(関東地方以西)、四国、九州
高さ 40~60cm
和名は、漢字にすると黄華鬘と書き、華鬘(ケマン)とは仏殿の欄間に飾る仏具のことで、花の形が似ており、黄色の花をつけることから名が付けられた。
葉は、1-2回羽状複葉で、花は総状花序につき、下から上に順に開花する。

サルトリイバラ
Smilax china
サルトリイバラ科 蔓性落葉低木
分布 北海道、本州、四国、九州、沖縄
高さ 2~3m
和名の由来は「猿を捕る茨」で、茂みに追い込まれるとサルでも逃げられないということから。別名サンキライ(山帰来)とも言う。
葉は、互生し円形から広卵形で、托葉の先が変化した巻きひげが1対つく。西日本では、端午の節句を祝う柏餅は、サルトリイバラの葉を用いる。
雌雄異株で、雌株は花後、直径1㎝ほどの球形の液果をつけ、10~11月になると鮮やかな朱赤色に熟す。根茎は生薬として用いられ、利尿、解毒、皮膚病などに効果がある。

クサスギカズラ
Asparagus cochinchinensis
キジカクシ科 多年草
分布 本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄諸島
高さ 1~1.5m
和名の「草杉蔓」は、杉のような葉を持ち、つる状の草本植物に由来する。
海岸の崖地に生育し、栄養分や水分を根に貯蔵する。
茎は初め立ち上がり、基部は木質になる。他の植物に巻き付くようにツルを伸ばす。葉のように見える葉状枝で、光合成を行う。
根は生薬や漢方薬として使用される。

オオキバナカタバミ
Oxalis pes-caprae
カタバミ科 多年草 南アフリカ原産 帰化植物
分布 関東地方以西の本州、四国、九州
大きさ 10~30cm
観賞用に栽培され、世界中に帰化している。
花期は3~5月ごろで、黄色い花を咲かせる。
地上茎は無く、株元に多くの鱗茎を作ってふえる。

ヤブムラサキ
Callicarpa mollis
シソ科 落葉低木
分布 本州(宮城県、石川県以南)、四国、九州
高さ 2~5m
葉の表面に軟毛が密生し、ビロードのような感触がある。
花期は5~7月で、葉腋から短い集散花序を出し薄紫色小さな花をつける。
似た仲間のムラサキシキブは、葉は両面とも無毛である所が異なる。

ハマヒサカキ
Eurya emarginata
モッコク科 常緑低木
分布 本州(千葉県以西)、四国、九州、琉球列島
高さ 2~5m
ヒサカキ属の植物は、腐った肉や糞(ふん)のようなにおいでハエなどの昆虫を騙し、花粉を運ばせる花(腐肉擬態花)をつける。ガス臭にも間違われることがあるほどの特異な香りがする。花期は11~12月で葉腋に淡黄緑色の鐘型の花が1〜4個下向きに束生する。

ウラシマソウ
Arisaema thunbergii subsp. urashima
サトイモ科 多年草
分布 北海道南部、本州、九州一部
高さ 40~50cm
和名は、肉穂花序の先端の花序付属体が釣り糸状になっていることから、浦島太郎の釣竿に見立てたところに由来する。
筒状の苞(仏炎苞)の中に棒状の花序(肉穂花序)があり、根元に花をつける。花びらはなく、 雄しべか雌しべだけの花で、地下の球根が小さいうちは雄花、 球根に十分な栄養を蓄えると雌花を咲かせて結実するので、 性転換植物と呼ばれる。

マルバグミ(オオバグミ)
Elaeagnus macrophylla Thunb.
グミ科 常緑広葉樹 低木 在来種
分布 関東地方以西の本州、四国、九州、沖縄
高さ 1~4m
暖地の海岸沿いに自生する。
葉は、革質で互生し広卵形をしている。葉の裏は鱗状毛が密生し銀白色に見える。
花期は10~11月で、釣鐘状のクリーム色の小花をつける。開花翌年の3~4月頃になると淡い紅色に熟し、食用できる。果実は偽果。

タイトゴメ
Sedum japonicum subsp. oryzifolium
ベンケイソウ科 原産地不明の帰化種
分布 関東地方以西の本州、四国、九州、奄美大島
準絶滅危惧 Cランク 兵庫県版レッドデータブック2020(植物・植物群落)
和名は高知県柏島の方言で大唐米の意で、葉形が米粒の形に似ていることに由来する。海岸の岩上などに生える。沼島では、廃屋の雨樋などにも群生しているのが観察できた。花期は5~7月で、黄色い星形の花が側生する花枝につく。

スイカズラ
Lonicera japonica
スイカズラ科 半落葉つる性低木
分布 北海道南部、本州、四国、九州
長さ 〜10m
和名「吸い葛」は、花筒の奥にある蜜を吸う唇の形が花の形に似ているところに由来する。花は5~7月ごろで白い花を2つずつつける。花の色が白から黄色に変化することから「金銀花」とも呼ばれる。花の季節にはリナロールやネロリドールなどの成分を含む甘い香りがあたりに漂う。
花や茎葉は、薬用や食用、染料にもなる。

キキョウラン
Lonicera japonica
ワスレグサ科 多年生草本
分布 紀伊半島、四国、九州、小笠原諸島、琉球列島
長さ 50〜150cm
絶滅危惧Ⅱ類 Bランク 兵庫県版レッドデータブック2020(植物・植物群落)
和名の「桔梗蘭」は、花の形が桔梗に、葉が蘭に似ていることに由来する。主に海岸の日当たりのよい崖地でみられる。
花期は5~7月で、青紫色の花と果実をつける。
有毒植物だが、薬用として利用されている。

鞘状褶曲(さやじょうしゅうきょく)
2017年3月14日に兵庫県指定の天然記念物に登録されている。
鞘状褶曲は、同心円状の形を持つ大変珍しい褶曲で、沼島の褶曲は1994年に発見された。「1億年前の地球のしわ」とも言われ、地殻変動の痕跡が観察できる。
満潮時には一部を残して水没するため、干潮時に訪れる方が良い。また、鞘状褶曲がある黒崎へは、周回道路から外れ山の中へ分け入るルートのみであり、案内人を伴って行くことを推奨する。
潮間帯につくカメノテ
カメノテの頭状部
フジツボもびっしり
緑色片岩に入る石英脈
鮮やかな色の変成岩
奇岩があちこちに見られる
褶曲
北部には主に緑色片岩が分布する


