人と皮革の関わり方についての調査_File 03_日本における皮革の産地
2025.12.15
Researchの概要
兵庫県たつの市で生まれたレザーバッグブランド「RETHAEL」の展示会を開催するにあたり、人と皮革の関わり方に関する調査を行った。
なぜ人は動物の皮の力を借りるのか、その力を借りるために何をしてきたのか。
この調査によって、人が皮革に触れたときの感覚をより豊かにし、この先の暮らしに役立てる。
今回は日本における皮革の産地に関して、その位置と地図情報を照らし合わせ、
皮革産業がなぜその土地で発展したのか、文化として立ち上がっていったのかを読み取る。
To prepare for an exhibition of the leather bag brand “RETHAEL,” born in Tatsuno City, Hyogo Prefecture, we conducted research on the relationship between people and leather.
Why do people need the power of animal hides?
What have people done to harness this power?
This research aims to enrich the sensory experience of touching leather and apply these insights to future living.
This time, we examine the locations of leather-producing regions in Japan by comparing their positions with map data.
And explore why the leather industry developed in those areas and emerged as culture.
日本における皮革の産地

調査方法
日本では、兵庫県の姫路市 / たつの市、東京都の台東区や墨田区、和歌山県の和歌山市、埼玉県の草加市が4大産地といわれている。それらの地域における、皮革・製革事業者の位置をタウンページより抽出し、地図内にマッピングする。その分布と地勢や歴史から関連性を読み解いていく。
※地図はすべて国土地理院地図より加工して掲載。
1.兵庫県 姫路市 / たつの市

日本で最も生産量が多いのがこの地域である。皮革産業としての歴史は古く、鎌倉時代から培われたとされている。戦国時代、この辺り一帯の領主であった黒田長政が姫路に高木村をつくり「皮づくり」を招へいしたことが、この地域に根付いたきっかけともいわれており、この地域で生産されていた「姫路革」(白なめし革)は、武具材料として重要視されていた。江戸時代に入り、全国的な商品経済の発展とともに、皮産業もまた発展を遂げていく。当時、たつの市南にある室津港は瀬戸内海に面する要港であり、その位置関係から揖保川流域で皮革産業が発達していった。近代以降は、機械や新たな鞣しの手法の導入でより工業化・専門化が進んでいく。

姫路市 高木地区

姫路市 御着・四郷地区

たつの市 松原地区

たつの市 誉田地区

たつの市 沢田地区
この周辺の位置関係や歴史のほか、皮革の産地となった大きな理由として下記のように考えられている。
- 鞣しに必要な大量の河川水 市川・揖保川・林田川など豊富で穏やかな流れをもった河川の水が得られた
- 降水量の少ない瀬戸内気候 長い天日干し工程に必要な安定した気候が得られた
- 赤穂の塩 原皮を保存するための塩を安価に得られた
- 原料の入手しやすさ 西日本、特に大阪の渡辺村から原皮を入手しやすい地域にあった
- 消費の中心地に近い 京都や大阪など、経済・消費の中心地に近接し、販路を確保しやすかった
事実、地図のマッピングをみても、市川や林田川沿いに皮革事業者が分布していることが見て取れる。瀬戸内海に流れ込むそれらの河川が、皮革・製革業を営むうえで工程上・流通上ともに好都合な位置であったと思われる。
2.東京都 台東区 / 墨田区

台東区 浅草付近

墨田区
東京のこの地域ではピッグスキン(豚革)の一大産地となっている。江戸時代より、皮革は馬具や武具、また財布や煙草入れなどの日用品としても重要視されていた。当時の皮革の取り扱いは、浅草の今戸あたりで弾家が支配していた。その後明治維新などにより軍隊の洋式化がすすめられ、羽織や袴、靴の需要と軍需により発展していく。明治4年の解放令によって弾家の封建的な特権産業から脱する。この頃には全国各地から、この地域まで皮革事業者が移転してきたという。近代資本主義のもと皮革産業は発展していくが、同時に市街地が拡大し、工場が発する臭いによって社会から圧力を受け、現在の地域に集中していく。
墨田川と荒川に隣接する、水が豊富な地域であることが地図からもわかる。東京都の東側は、荒川などが形成した三角州となっており東京低地に位置し、地下水位が高く水利的にもよい立地であったと思われる。
3.和歌山県 和歌山市

この地での皮革の歴史は、藩政改革に伴って1869年に和歌山藩の津田出(つだ いづる)がプロイセンからカール・ケッペンを招き、徴兵制の軍隊を整備したことに始まる。わらじを洋靴に改めることが求められ、プロイセンから靴製造の技師を雇い入れた。そして、革製の兵用具や軍靴の自給を目指して、全国に先駆けて「西洋沓仕立」ならびに「鞣革製法伝習所」を設立する。その際に和歌山港の北東にある友ヶ島は原皮を生産するための牛の牧場となった。
事業者の分布をみると、和歌山藩の拠点となっていた和歌山城が近くにあることと、大きな紀ノ川に隣接しその水系のひとつである和歌川も通り抜ける地域にあたる。この和歌川は高低差がほとんどなく、水運にも便利であったという。
4.埼玉県 草加市

草加は古代には湿地帯で、豊富な地下水が皮革生産に適していたことや、首都圏に近く流通しやすかったことにより、昭和10年代に都内から工場が移転したことにより一大産地となっていった。
まとめ
皮革の4大産地における皮革・製革事業者の分布図を皮革することにより、下記が読み取れる。
皮革産業については、
・製革の工程上、大量の水を使用するため、それを確保できる穏やかな河川のそばに立地する。
・歴史上、戦のための武具や軍需に伴い、その拠点となる場所の近くに産地が発展している。
・商業の中心地に近接し、流通や販路を確保しやすい場所に根付く。
・原皮が手に入りやすい場所に発展する。
参考文献:
『東京における製革業地域の形成』 竹内淳彦・北村嘉行
日本革市ホームページ
兵庫県皮革産業協同組合連合会 ホームページ
和歌山市ホームページ

調査方法
日本では、兵庫県の姫路市 / たつの市、東京都の台東区や墨田区、和歌山県の和歌山市、埼玉県の草加市が4大産地といわれている。それらの地域における、皮革・製革事業者の位置をタウンページより抽出し、地図内にマッピングする。その分布と地勢や歴史から関連性を読み解いていく。
※地図はすべて国土地理院地図より加工して掲載。

日本で最も生産量が多いのがこの地域である。皮革産業としての歴史は古く、鎌倉時代から培われたとされている。戦国時代、この辺り一帯の領主であった黒田長政が姫路に高木村をつくり「皮づくり」を招へいしたことが、この地域に根付いたきっかけともいわれており、この地域で生産されていた「姫路革」(白なめし革)は、武具材料として重要視されていた。江戸時代に入り、全国的な商品経済の発展とともに、皮産業もまた発展を遂げていく。当時、たつの市南にある室津港は瀬戸内海に面する要港であり、その位置関係から揖保川流域で皮革産業が発達していった。近代以降は、機械や新たな鞣しの手法の導入でより工業化・専門化が進んでいく。

姫路市 高木地区

姫路市 御着・四郷地区

たつの市 松原地区

たつの市 誉田地区

たつの市 沢田地区
この周辺の位置関係や歴史のほか、皮革の産地となった大きな理由として下記のように考えられている。
- 鞣しに必要な大量の河川水 市川・揖保川・林田川など豊富で穏やかな流れをもった河川の水が得られた
- 降水量の少ない瀬戸内気候 長い天日干し工程に必要な安定した気候が得られた
- 赤穂の塩 原皮を保存するための塩を安価に得られた
- 原料の入手しやすさ 西日本、特に大阪の渡辺村から原皮を入手しやすい地域にあった
- 消費の中心地に近い 京都や大阪など、経済・消費の中心地に近接し、販路を確保しやすかった
事実、地図のマッピングをみても、市川や林田川沿いに皮革事業者が分布していることが見て取れる。瀬戸内海に流れ込むそれらの河川が、皮革・製革業を営むうえで工程上・流通上ともに好都合な位置であったと思われる。
2.東京都 台東区 / 墨田区

台東区 浅草付近

墨田区
東京のこの地域ではピッグスキン(豚革)の一大産地となっている。江戸時代より、皮革は馬具や武具、また財布や煙草入れなどの日用品としても重要視されていた。当時の皮革の取り扱いは、浅草の今戸あたりで弾家が支配していた。その後明治維新などにより軍隊の洋式化がすすめられ、羽織や袴、靴の需要と軍需により発展していく。明治4年の解放令によって弾家の封建的な特権産業から脱する。この頃には全国各地から、この地域まで皮革事業者が移転してきたという。近代資本主義のもと皮革産業は発展していくが、同時に市街地が拡大し、工場が発する臭いによって社会から圧力を受け、現在の地域に集中していく。
墨田川と荒川に隣接する、水が豊富な地域であることが地図からもわかる。東京都の東側は、荒川などが形成した三角州となっており東京低地に位置し、地下水位が高く水利的にもよい立地であったと思われる。
3.和歌山県 和歌山市

この地での皮革の歴史は、藩政改革に伴って1869年に和歌山藩の津田出(つだ いづる)がプロイセンからカール・ケッペンを招き、徴兵制の軍隊を整備したことに始まる。わらじを洋靴に改めることが求められ、プロイセンから靴製造の技師を雇い入れた。そして、革製の兵用具や軍靴の自給を目指して、全国に先駆けて「西洋沓仕立」ならびに「鞣革製法伝習所」を設立する。その際に和歌山港の北東にある友ヶ島は原皮を生産するための牛の牧場となった。
事業者の分布をみると、和歌山藩の拠点となっていた和歌山城が近くにあることと、大きな紀ノ川に隣接しその水系のひとつである和歌川も通り抜ける地域にあたる。この和歌川は高低差がほとんどなく、水運にも便利であったという。
4.埼玉県 草加市

草加は古代には湿地帯で、豊富な地下水が皮革生産に適していたことや、首都圏に近く流通しやすかったことにより、昭和10年代に都内から工場が移転したことにより一大産地となっていった。
まとめ
皮革の4大産地における皮革・製革事業者の分布図を皮革することにより、下記が読み取れる。
皮革産業については、
・製革の工程上、大量の水を使用するため、それを確保できる穏やかな河川のそばに立地する。
・歴史上、戦のための武具や軍需に伴い、その拠点となる場所の近くに産地が発展している。
・商業の中心地に近接し、流通や販路を確保しやすい場所に根付く。
・原皮が手に入りやすい場所に発展する。
参考文献:
『東京における製革業地域の形成』 竹内淳彦・北村嘉行
日本革市ホームページ
兵庫県皮革産業協同組合連合会 ホームページ
和歌山市ホームページ

台東区 浅草付近

墨田区
東京のこの地域ではピッグスキン(豚革)の一大産地となっている。江戸時代より、皮革は馬具や武具、また財布や煙草入れなどの日用品としても重要視されていた。当時の皮革の取り扱いは、浅草の今戸あたりで弾家が支配していた。その後明治維新などにより軍隊の洋式化がすすめられ、羽織や袴、靴の需要と軍需により発展していく。明治4年の解放令によって弾家の封建的な特権産業から脱する。この頃には全国各地から、この地域まで皮革事業者が移転してきたという。近代資本主義のもと皮革産業は発展していくが、同時に市街地が拡大し、工場が発する臭いによって社会から圧力を受け、現在の地域に集中していく。
墨田川と荒川に隣接する、水が豊富な地域であることが地図からもわかる。東京都の東側は、荒川などが形成した三角州となっており東京低地に位置し、地下水位が高く水利的にもよい立地であったと思われる。

この地での皮革の歴史は、藩政改革に伴って1869年に和歌山藩の津田出(つだ いづる)がプロイセンからカール・ケッペンを招き、徴兵制の軍隊を整備したことに始まる。わらじを洋靴に改めることが求められ、プロイセンから靴製造の技師を雇い入れた。そして、革製の兵用具や軍靴の自給を目指して、全国に先駆けて「西洋沓仕立」ならびに「鞣革製法伝習所」を設立する。その際に和歌山港の北東にある友ヶ島は原皮を生産するための牛の牧場となった。
事業者の分布をみると、和歌山藩の拠点となっていた和歌山城が近くにあることと、大きな紀ノ川に隣接しその水系のひとつである和歌川も通り抜ける地域にあたる。この和歌川は高低差がほとんどなく、水運にも便利であったという。
4.埼玉県 草加市

草加は古代には湿地帯で、豊富な地下水が皮革生産に適していたことや、首都圏に近く流通しやすかったことにより、昭和10年代に都内から工場が移転したことにより一大産地となっていった。
まとめ
皮革の4大産地における皮革・製革事業者の分布図を皮革することにより、下記が読み取れる。
皮革産業については、
・製革の工程上、大量の水を使用するため、それを確保できる穏やかな河川のそばに立地する。
・歴史上、戦のための武具や軍需に伴い、その拠点となる場所の近くに産地が発展している。
・商業の中心地に近接し、流通や販路を確保しやすい場所に根付く。
・原皮が手に入りやすい場所に発展する。
参考文献:
『東京における製革業地域の形成』 竹内淳彦・北村嘉行
日本革市ホームページ
兵庫県皮革産業協同組合連合会 ホームページ
和歌山市ホームページ

草加は古代には湿地帯で、豊富な地下水が皮革生産に適していたことや、首都圏に近く流通しやすかったことにより、昭和10年代に都内から工場が移転したことにより一大産地となっていった。
皮革の4大産地における皮革・製革事業者の分布図を皮革することにより、下記が読み取れる。
皮革産業については、
・製革の工程上、大量の水を使用するため、それを確保できる穏やかな河川のそばに立地する。
・歴史上、戦のための武具や軍需に伴い、その拠点となる場所の近くに産地が発展している。
・商業の中心地に近接し、流通や販路を確保しやすい場所に根付く。
・原皮が手に入りやすい場所に発展する。
参考文献:
『東京における製革業地域の形成』 竹内淳彦・北村嘉行
日本革市ホームページ
兵庫県皮革産業協同組合連合会 ホームページ
和歌山市ホームページ


