外側の荒壁から10日あまり、濃く湿り気のある土は白っぽく乾燥し始める。あらかた乾いたころで、うらもどきといって室内側の荒壁を塗る。
「田植えの時期に荒壁できるなんてのどかやな」
左官屋さんがぽつりとつぶやく。ひと昔前までは当たり前の光景だったんだろうなと想像するが、今となってはほんとに特殊なものになってしまって我々建築の専門でもみることもない。

家の周囲では田植えが行われ、ツバメが颯爽と飛び回る。自分たちの巣作りの場所を見極めているのだろうか、餌をさがしてるのだろうか。時折家の中に入ってきて、僕たちより先に住もうと巣作りを始めようとする不届きな輩もいる。
ツバメの巣は、泥と藁でできている。人間の家はもう少し頑丈に木や竹を使ってはいるが似たようなものである。一気に親近感がわいてくるのは不思議なものである。