兵庫・淡路・建築設計事務所 ヒラマツグミ兵庫・淡路・建築設計事務所 ヒラマツグミ





hiramatsugumiには通奏低音のように我々の様々な取り組みを一貫して大切にしている言葉がある。然、ネン、nenという言葉である。然はひとことで明確な意味をしめす言葉ではない。自然のまま、あるがまま。変わらぬまま、変わること。あたりまえ。ヒトがするコト、ヒトにかなわぬこと。自然、当然。受け入れる。認める。許す。受け継ぐ。あるがままであり、その逆でもある。どこか矛盾を抱えて捉えどころのない、受け取る人によってその字が持つ意味、世界がどこまでもひろがる。建築について、工芸について、食について、我々は大きな矛盾を常に抱えている。建築を作るという行いは、自然破壊からはじまる。だが、我々が目指す建築は、自然によりそった、自然に近づいた建築であるはずである。食についても他者である命を頂きながら、その関係性を一旦たちきって、次につなげていくための行為である。工芸においても人が作るものでありながら、自然を内に宿したもの、自然が持つ力を無しにはできない。われわれが生きることと同じように、明確な答えがそこにあるのではなく、なにか問いのようなものが然には含まれている。

hiramatsugumiのロゴマークは3本と4本の線で構成されて円を描いている。かつて杣人が木を伐る斧には必ず、この3本と4本の線が刻まれていた。3本の線は「ミキ」と呼ばれ、お神酒を現し、4本の線は「ヨキ」と呼ばれ地水火風の四大を現したそうだ。木を伐る前に7本の線が刻み込まれた斧を木にたてかけ、お祈りをしてから木を伐っていたという。日常的に木を伐るという行為が自然に対する畏敬の念を深め、木を伐るための道具にその想いが刻み込まれている。然という曖昧な言葉を表すカタチとして、道具に線を刻み込むという、このヨキが示す考え方や行動によく表れていると思う。
hiramatsugumiが作り出すあらゆるものに、この3本と4本の線を刻み込むことによって、人と自然との関係性のなかで、われわれの立つ位置・姿勢を示し続けたい。